Marvel Mystery Comics #3 (1939) Marvel初の宇宙戦争勃発・・・?
販売日:1939/11/17
メイン誌である「Marvel Mystery Comics」の3冊目です。
- THE HUMAN TORCH
- The Angel
- PRINCE NAMOR the SUB MARINER
- THE MASKED RAIDER
- AMERICAN ACE
- SIEGFRIED SUICIDE
- ADVENTURES OF KA-ZAR
THE HUMAN TORCH
爆薬の製造会社社長であるMrカーソンは、コメットという特急列車に乗っていた。
ニュースを見るためテレビをつけたカーソンが見たのは、
ニューヨークが未知の宇宙船に攻撃される映像だった。ひどく慌てるカーソンだったが、
そこに同じ列車に乗り合わせたトーチが話しかける。
曰く、テレビに映しだされているのは、
数か月前に話題になったラジオ番組を基にした映画とのことだった。
しかし、世間話もつかの間、
列車の外に先ほどのテレビ映像と同じ宇宙船が現れる。宇宙船は線路を破壊し、トーチが反応する間もなく列車は脱線、転覆してしまった。
程なくして、宇宙船から2人組の乗組員が降り、がれきに押しつぶされ動けないMrカーソンの前に現れた。
彼らはMrカーソンの会社が開発した開発中の爆薬の方程式を要求するが、Mrカーソンは拒否する。
乗組員は強硬手段に出ようとするが、そこへ列車の瓦礫から脱出したトーチが現れた。
トーチは乗組員を撃退したが、Mrカーソンは爆薬の方程式をトーチに託すと、息を引き取ってしまった。
託された方程式を届けるため、Mrカーソンの会社を訪れたトーチは、
Mrリットンという男と、カーソンの娘ダイアナが口論しているのを目撃する。Mrカーソンもまた、爆薬の方程式を手に入れようとしているのだった。
カーソンを追い払ったトーチとダイアナは、爆薬の製造に着手する。
研究所内で実験するには、爆薬が強力すぎると知ったトーチたちは、
郊外で実験するため、爆薬を積んだ車を走らせた。しかし、列車に現れた宇宙人により車は爆破され、トーチは水冷カプセルに囚われてしまう。
運ばれたトーチが目にしたのは、Mrリットンだった。
Mrリットンは、爆薬"スーパーT.N.T"の方程式に引き渡しを条件に、火星人と手を組んでいたのだ。
Mrリットンはトーチとダイアナを殺そうとするが、拘束から脱出したトーチは火星人を撃退する。
Mrリットンは列車に乗り逃走するが、追いついたトーチは電車を丸ごと溶かしてしまい、Mrリットンを捕まえたのだった。
一方、ダイアナは火星人と話し合い、その目的を知った。
火星人の文明は百年前の戦争により大きく衰退しており、
彼らは文明の立て直しのために火星の支配者からMrリットンへ遣わされていたのだった。
計画の失敗を悟った火星人は地球を去ろうとするが、トーチとダイアナは彼らを引き留め、方程式を提供することを決めたのだった。-------------
ということで、今回の冒頭ではH・G・ウェルズのSF小説「宇宙戦争」のネタが使われています。
ラジオドラマの内容を聞いたアメリカ市民が、本当の侵略と勘違いしてパニックが起きた、というエピソードですね。
私はこのエピソードを"大昔"のエピソードとして認識してましたが、
実は1938年の出来事だそうで、すなわちこの本では”最新の時事ネタ”として扱っているわけです。
改めて、ジェネレーションギャップを感じます。
また、本話で初めて宇宙からの勢力が現れました。
大抵、外宇宙から来た存在は地球より優れた科学力を持っているのが定番ですが、
今回登場した火星人は、すでに衰退してしまった文明というのが目新しかったですね。
(宇宙船持ってる時点でかなり進んでるだろ、という突っ込みもありますが)
また、今回は危険な技術(スーパーT.N.T)をどのように扱うか、という話でもありました。
トーチとダイアナは最終的に火星人に託すことを決めましたが、
これが正しい判断なのかは時間が経たなければわかりません。
(火星人が次回以降登場するか知らないですが)
しかし、少なくとも相手としっかり対話し、人種などの色眼鏡なく相手を見極め、かかる責任への勇気を持つことが大事、というのがこの話教訓かなと感じました。
The Angel
路地裏で若い女性が、ローブの男たちに誘拐された。
悲鳴を聞きつけたエンジェルは、彼らを追跡し、郊外の古城へたどり着いた。
しかし、城の入り口に差し掛かる直前、跳ね橋があげられ、
エンジェルは車ごと濠に転落してしまった。
囚われた女性は、城の中がカルト教団の集会場になっているのを目にする。
教祖の男は、彼女を火の神への生贄としてささげるよう部下に指示するのだった。
女性が柱にくくられ、処刑されようとする刹那、
エンジェルが天窓から姿を現した。エンジェルはカルト教団の一味を撃退し、彼女を救い出す。
エンジェルに恐れをなした教祖は、その場から逃げ出そうとするが誤って落とし穴へ転落してしまった。
脱出したエンジェルが見たのは、教祖が落ちた穴へ向かって次々と落下していく信者たちの姿だった。---------------------
今回はホラー風味のエンジェルです。
カルト教団の描写では太鼓や踊りの描写があったので、モデルはブードュー教辺りでしょうか。
一方で、今回のエンジェルはほぼ腕っぷしだけで事態を収拾しており、
かなりヒロイックでかっこよかったです。
PRINCE NAMOR the SUB MARINER
前回、女性の誘拐未遂事件を起こしたネイモアを捕まえるため、
警察は泳ぎの特異な女性士官を使ったおとり作戦を計画した。
抜擢された女性 ベティ・ディーン は、
ニューヨークの港で張り込みを行い、一週間後ネイモアを発見する。ベティは岸から飛び込み、溺れたふりをしてネイモアに助けを求めた。
ベティは誘い出されたネイモアに助けられるが、
銃を突きつけ拘束しようとしたところ、あっさりと払いのけられてしまった。そのまま連れ去られそうになったベティだったが、
その時、空から一隻の爆撃機が現れ、港の貨物船に爆撃を始めた。
ネイモアはベティを浮きに置き去ると、貨物船の救出に向かった。
海中にUボート(ドイツの潜水艦)を見つけたネイモアは、
魚雷の発射口から内部へ侵入し、ドイツ軍を制圧した。そのまま船を浮上させ、対空砲で爆撃機を撃墜し、危険を排除したネイモアは、
沈没しかけた貨物船を怪力で岸まで運び、乗組員を救うのだった。
岸にたどり着いたベティはネイモアへ、連合軍の活動を手伝ってほしいと頼む。
ネイモアが出した答えは-----------
ということで、次回へ続きます。
これまで地上への侵略を目論んでいたネイモアですが、
ここにきて大きな分岐点に差し掛かりました。
そもそものきっかけが色仕掛けなのはなんか情けないような気もしてきますが、まずは次回ネイモアがどのような判断をするか、期待して待ちます。
THE MASKED RAIDER
土地を狙う悪党を、通りすがりのマスクドレイダーが成敗しました。--------
すいません。
あまりに展開が同じなので、あらすじ省略しました…!
マスクドレイダーは特にキャラの掘り下げや葛藤がなく、
問題解決の舞台装置として動くだけなので、特に語ることがないんですよね。
もちろん娯楽誌なので、銃を撃って悪党を成敗するだけで、一定の価値はあるのですが。
AMERICAN ACE
ペリーウェイドは、空襲を受けた町である女の子 ジーニー を助ける。
彼女は空襲で両親を亡くしてしまっていた。
彼女の妹が祖父の家にいると聞いたウェイドは、
自分の飛行機で彼女を送り届けた。
一方で、侵攻を始めたウルスラ女王はさらに徴兵を進め、攻勢を強めていく。
ジーニーの家を飛び立ったウェイドも、空軍から攻撃を受け、
数分と立たずにジーニーたちの家に墜落してしまう。
ジーニーたちの看護を受け、意識を取り戻したウェイドは、
ウルスラ王女の圧政に立ち向かうことが自分の使命だと決意するのだった。
アメリカンエースの第2話です。
他のヒーローと比べても時間をかけて主人公が戦う背景を描いています。
とはいえ、飛行機を失い、国からの脱出もままならない状況のウェイド。
どのように再起するのか、次回が楽しみです。
SIEGFRIED SUICIDE
ジークフリート線で戦っているアメリカ兵ビル・スターンは、敵砦への突撃を敢行した。
殆どの味方が機関銃に倒れる中、砦の足元にたどり着いたビルは、
敵軍の攻撃が止むまで息をひそめる。ビルは敵軍が攻撃をやめたタイミングで手りゅう弾を投げ込み、
大砲や機関銃を巻き込む大爆発を引き起こした。
かくして、戦線攻略の活路は開かれたのだった。----------
今回の小説コーナーです。
ジークフリート線というのは第二次世界大戦に際して1938年にドイツに築かれた大規模な防衛線で、
実際にはこの小説のような大規模な戦闘は(この時期はまだ)なかったようです。
この時期の戦争は、どちらかといえばネイモアで描かれたような潜水艦による通商破壊がメインだったみたいです。
ADVENTURES OF KA-ZAR
大型獣のハンター スティーブ・ハーディ は、
獲物を狙ってカザールが住むジャングルへ踏み込んだ。彼は先住民を使ってキャンプを建設し、
象などの獣を捕らえ始めた。
数日が経ち、カザールも獣が捕らえられ始めたことを知り、キャンプへ向かった。
キャンプに辿り着いたカザールは、夜闇に乗じて警備をしていた先住民を拘束し、捕らえられていた動物をすべて解放した。
あくる日、スティーブは異変に気付き、木に縛り付けられた先住民に事情を聴いた。
しかし、先住民はカザールをジャングルの神"アナグマ"と同一視し、恐れ慄く一方だった。
先住民たちに恐怖が伝染するが、スティーブもこのまま帰るわけにはいかなかった。
スティーブ一行は、獣の捕獲を再開しようとするが、
その度に姿の見えないカザールの襲撃にあってしまう。スティーブもついに諦め、ジャングルから引き上げるのだった。
ジャングルの平穏を取り戻したカザールだったが、
宿敵 ポール・デ・クラフト がジャングルへ帰ってくることをまだ知らないのだった……------------
前回のカザールはジャングルの動物たちの話でしたが、
今回は対ハンターの戦いでした。
カザールはハンターたちを脅かすものの、
基本的に命は狙っていないことが描写されています。
(今回のハンターが狩猟目的ではなく、捕獲が目的だったこともありそうですが)
一方で、ハンターが現れることでほかの動物が"人間"であるカザールに対処を要求する、
といったある種の人種問題も描かれています。
先住民からは神と同一視され、人にも獣にもなり切れないカザールが、
因縁の相手と再会し、どのような決着を遂げるのか、次回が楽しみです。